本と本をつなぐことは、百間のアルス・コンビナトリア(結合術)の根幹です。です。目抜き通りに本たちが出てきて次々に歌い継いでいくような、それがその時々訪れる人によって違う音楽に聞こえるような、そんな本の街を、角川武蔵野ミュージアムに構想しました。
わたしたちは、伝説の書店・松丸本舗にはじまり、近畿大学「アカデミックシアター」など、数々のブックウェアプロジェクトを実現してきました。そしてまた、まだ誰も見たことのない本の空間をかたちにしていく。そのために、編集工学に基づいた約60名の選書設計チームと、空間演出のクリエイター集団約60名のコレクティブブレインをデザインしました。
顔ぶれの多様によって、ほんの少しずつ、ディレクターの選書イメージや言葉にアソビができていく。その“間”の設計が、本たちも動いていくような有機的な場を生み出しています。
エディットタウンには、約2.5万冊の本がざわめき、そこを歩く人の思考を誘う9つの文脈が流れています。そして、その文脈から立ち上がる世界観や流れの形に沿って、本棚が設計されています。たくさんの人に触られて棚がいきいきとしているのがわかる、生命システムのような棚ができました。
ここは、買ったり借りたりして一冊の本を読むのではなく、知のネットワークを空間的に感じながら本に出会う街。そんなぶらぶら歩きをたのしんでもらえるよう、ここで過ごす経験をデザインしています。外の世界からのアプローチを、ストリートを歩く視線を、それを導く照明を。
それから、本のストリームへのダイブを誘う、デザイナー競作による天井空間「リコメンドルーフ」や、文脈に分け入っていくポイントを示したシンボルサインを用意。本棚のそこここには、さらに本の森の深みへと続く「ステップワード」が散りばめられています。
そんな「ブックストリート」の路地を入ると、ヨーロッパ中世の博物陳列室に肖った「驚異の部屋」や「エディット&アートギャラリー」がイメージを湛えて待っています。そして、9つの文脈の流れ着く先では、8メートルの高さまでずらりと並んだ本たちがオペラ を繰り広げるかのような「本棚劇場」がクライマックスを用意しています。
これらのデザインに用いたのは、編集工学であり日本という方法。見立てや伏せと空けの按配によって、ここを歩く人のアタマの中で情報が縦横無尽に手をつなぎ出します。
そんな編集の起こる街として、「Edit Town」を構想しました。